ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
地雷、踏んでるの解ってて言ってしまった。
ノブの中に、茉莉子さんがまだいるんだと思う。
ケド、一生このまま茉莉子さんとの思い出だけを抱えたまま、ノブは生きていくの?
それも一つの生き方だけどさ………。
逆に、こういう話の流れじゃないと訊けない気がしていた。
「………結婚ねぇ…………やっぱ気になる?」
そりゃあなるよ………。
茉莉子さんのコトがあるから………。
「そりゃあもう、教頭や学年主任、PTAから、見合い話が写真付きで来るんだっけ。しかも日替わりランチみてぇに。んもー大変だっちゃね」
「えっ?マジで?」
ノブ、スゴ過ぎ!
ルックスも性格も(今のところね。アタシが感じてる範疇では。高校時代のカレは論外)いいから、学校やPTAからも人気だろうし。
生徒から人気あって、親や同僚ウケするならそりゃあ~放っておかないよ。
「見合い写真とか経歴書見るの、なかなか面白れぇよ」
ケタケタと少し高い声で笑う。
「その感じだと、結婚なんてぜんっぜん、考えてないっしょ?」
ノブの笑い方で、アタシは何となくだけど感じたの。
確信したの。
彼はやっぱり、結婚なんて考えてないコトを。
「―――――そーだよ」
「………」
「だいいち俺、まだ23だし。教師って仕事の面白さが、二年目になってだいぶ解ってきたし」
ノブ、茉莉子さんのコトは………?
そう言いかけたケド、止めた。
「『茉莉子以上のヤツが現れたら、考えるかも』………そーゆー事にしといて」
自分で踏んだ地雷は、不発。
あっさりと躱(かわ)された。
よかったのか、悪かったのか………。