ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
その後ノブは、話題をがらりと変えた。
アタシが地雷踏むようなコトを言ったのに。
全く怒った様子もなく、フツーに喋ってくれた。
それが却って、アタシには怖かった。
実は………怒ってる?
そんなコトをノブと会話しながらも、頭の隅の隅で考えてしまっていた。
やっぱ、結納のコト、言わない方がよかったんじゃないかな?
今更遅いケド………。
他愛もない話をした後。
アタシから
「じゃあ…もう日付変わっちゃうし………」
と、切り出す。
「―――――衣理………」
「ん?」
いつもより少し低いトーンで呼び止められたからか、アタシの心臓がビクンと跳ねた。
「…………いや………何か言おうとしたけど………忘れちった」
「なーんだ」
「悪りぃ悪りぃ。じゃ、またな………お休み」
「えっ、あ………うん。おやすみなさい………」
………“忘れた”なんてウソついて。
アタシだって、そのくらい解るってば。
でも、何を言いたかったのかな?
通話の切れたケータイ握り締めたまま、空いたもう片方の手で、ベッド脇の窓のカーテンをそっと開けてみる。