ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「………エリ?どうした?」
迷子を見付けたような表情で、シンが訊ねる。
会話の途中なのに。
アタシったら………バカ。
えっと………。
何て返せばよかったんだっけ?
ああっ!!
ヤバイ………焦る………。
どうしていいかパニクって、目が泳いじゃうよ。
「おい、大丈夫か?気分悪くなった?」
アタシを気遣い、立ち上がろうとするシン。
右手を自分の胸元まで挙げ、“大丈夫”と、ジェスチャーし、シンを席に戻した。
みんな不安げな顔でアタシを見てるし。
何か言わなきゃ。
「あ………」
次の句を告げようとした瞬間。
お母さんが、そっ…と、アタシの膝元にそっと手を置いてこう言った。
「衣理、あなたはもう、自分の幸せだけを考えて」
アタシの中で、時が止まった―――――