ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
ウチがあまり裕福じゃなかったから。
母は、アタシに公務員になるコトを奨めていた。
大友家の生活を、ラクにしてもらいたかったから。
それは解っていた。
春に小5に進級する双子の弟と妹がいて。
ボーナスも毎期毎にカットされている3交代制の工場に勤務する父。
パート勤めの母。
年金暮らしの祖母。
アタシが収入が安定している公務員になれば、生活も少しはラクになる。
解っている。
でも、アタシは―――――
『―――――お母さん、衣理の事を“自分の理想の子供に”って願望があった………でも、やっぱり衣理は衣理なのよね………』
何よ、今更………
『今まで、“お姉ちゃんだから”なんて、あなたに辛い思いさせてきて………ゴメンね………衣理………』
そんな謝ったって………
もう、やめてよ………
『―――――あなたはもう、自分の幸せだけを考えて』
『………おか…あ…さん?』
それまでテレビだけを観てたアタシは、音にならないような声で、ゆっくり母の方へ視界を移した。
テレビを観ていたはずの母は、アタシを見ていた。