ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
オーダーした琥珀色の想いが、テーブルに揃う。
俺は暫く、グラスの縁を目の高さまで持ち、眺めた。
琥珀色の小さな海。
その中を漂う氷の塊。
グラスに軽くぶつかっては、“カラン………”と、切ない音色を響かせた。
「―――――水嶋が大学校へ行くまで辺りは、今までにないくらい幸せだったんですね、彼女は………」
シゲさんが呟く。
解らない。
俺には解らない。
俺の家族も、エリの家族も、淳子さんたちM-Blowのスタッフも。
みんな、両手(もろて)挙げて喜んでて。
俺が大学校へ行って、東京と仙台の遠距離恋愛になったけど、寂しくなかった。
卒業したら、エリと。
やっと一緒になれる―――
エリも“仙台の桜が満開になる頃、シンと同じ苗字になれるんだね”って。
今まで俺に見せたどの笑顔より、飛び切りの笑顔を見せて言ってたじゃねぇかよ………。
俺が東京へ行ってる間、何があった?
距離か?
月に一度ぐらいしか逢えなかったからか?
毎日、電話やメールしなかったからか?
俺が素っ気ない態度取って、エリを傷つけた?
その位で別れなきゃいけなかったら、とっくに別れてる―――――