ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


結可子らしくない
辿々しい話し方で
理由(ワケ)が
白く吐く息の糸と共に
紡がれていく


どうやら


つい最近
一人娘だった彼女に
会社を経営する結可子の両親が
見合い話を持ちかけてきた


その相手とは
取引先の大企業の御曹司

断るに断れない相手


親のメンツや
相手の親との付き合いで


結婚せざるを得ない状況になったとか

これって………“政略結婚”?


結可子は
“付き合っている人がいる”と
何度も断ったらしいが

彼女の両親は
俺に逢おうともせず
“他の男との結婚は反対”の一辺倒


結局
誰にも相談する事も出来ず
あれよあれよと
結婚する事になったそうだ


そんな
今どき流行らない
政略結婚なんて


俺の手で
奪おうと思えば
簡単に奪える

その位の自信はある


しかし


俺は
結可子が一人娘で
両親が会社を経営していて
この不景気の中
会社を続けていく事の大変さを

会議所に勤め始めて
理解できていたから


彼女の両親目線に立って
考えてしまっていた




“………真一………”


“……………”


“……………あたし………ホントは…真一と一緒になりたかった………でも………ゴメンね………苦労してあたしを育ててきた親のこと考えたら………”


“……………結可子”


“……………今度、もし逢う時があったら、その時はまた【友達】………だよね?あたしたち、また戻れるよね………?………シフトバックするだけだもん、かんた―――――”




俺は
思わず

また
我を忘れて

結可子の言葉を
唇で封じ込めてしまった―――――






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