ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
最終の新幹線がホームに滑り込んで来た―――――
結可子から
ゆっくりと
唇を離した
“………真一………ゴメンね………こんな形で別れたくなんかなかった………でも、こうするしか出来なかった………ゴメンね………大好きだよ………忘れないよ……一緒に過ごしたこと………真一………しんい…ちぃ……………”
コートの袖口を涙で濡らし
泣きじゃくる結可子が
グイッと
俺の腕を引っ張り
新幹線のドアまで連れて行き
入口に押し込む
“真一!!………ありがと…”
俺は
彼女を見詰める事だけしか
出来ずにいた
シュッ…………
仙台行きの最終新幹線の扉が閉まる
その時
結可子は何か言っているようだったが
扉が完全に閉まり
彼女の声が俺の耳に
届く事は無かった―――――
俺は
しばらく
胎児のように蹲(うずくま)って
デッキに佇んでいた
新幹線の中で
結可子との
沢山の出来事を思い出している間も
俺の目から
涙は出なかった
【来る者拒まず、去る者追わず】
そんなポリシー
クソ食らえなのにな
俺って………
こんな時に泣けないなんて
愛する人を追いかけないなんて
一体全体
どこまで薄情な男、なんだろ……………
―――――それから
俺と結可子が
連絡を取ることも
出逢うこともなかった
それが
まさか
中小企業大学校の
入校式で
偶然の再会をするとは
夢にまで思わなかった―――――