ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】




「よろしくお願いしますね、水嶋真一さん」


その声にふと、俯いた顔を上げる。

互いに歳をとったものの。
面影は、今も、変わらない。


素知らぬ顔して、微笑む結可子(かのじょ)。


まるで
“今日、初めてお会いしました”
みたいな顔しやがって………。


俺は、結可子と付き合っていたあの頃のまま。

変わらず“大根役者”で。

自分の気持ちを隠すのがヘタだ。
どうも顔や態度に出てしまう。



ほんの一瞬―――――
大宮駅の新幹線ホームで別れた10年前のシーンが蘇る。


ベンチで寄り添って、別れ告げられて。
俺がカフェオレの缶を落として、あいつが拾って。

訳も解らずキスをして………。


その一瞬が長いこと―――――



俺がこの後、グループディスカッションで自分の力を発揮できなかったのは言うまでもない…………。



はぁ………終わった……………。
長かった………。


集中出来なかった自分が情けなくて、腹立たしかった。






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