ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「―――――はぁ………」
俺はやっぱ、“見た目主義”なのか?
豚足…食えなかった………。
口の中の酢味噌を、キレイさっぱり漱ぎ落とし、洗面台の鏡を覗き込んだ。
ガチャッ―――――
「あ…………」
互いに声が漏れる。
その声の主同士、鏡の中で目が合った。
「……………どうも」
俺が鏡の中のヤツに頭を軽く下げ、挨拶をする。
「どうも………こんばんは………」
前髪を直しながら、俺に返す。
俺は、後ろにいる相手に振り向きもせず鏡を見ていた。
何処を見ている訳でもなく、ただ何となく………。
また鏡越しに目が合うと、つい反らしてしまった。
「―――――お前………何でここにいんだよ………」
何をカッコつけて言ってんだ?俺。
「……………それはあたしが訊きたいよ。工学部でた真一が、どうして中小企業大学校に来てるの………?会議所にいたから………?」
それもそうだ。
大学では工学部出てるっつーのに、経営支援の仕事して、この学校に入学して………。
「………俺だってまさか、お前にあ―――――」
―――――!?
鏡の中の女が消えた瞬間。
俺の腰に両腕を回し、しがみついてきた―――――
「……………逢いたかった………真一………」
付き合っていた時と変わらない声。
グリーンティーの香水の匂い。
スーツ越しに感じる、結可子の体温――――――
また、時が戻ってゆく。
あの頃の俺達に―――――