ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


大学校は月曜日から金曜日まで。


金曜日、演習が終わってから、溜まった洗濯物を持って帰る者。
土曜日、東京を満喫してからゆっくり帰る者。


週末は、俺同様に寮生活しているヤツらの殆どが地元に帰る。
一応寮にいることは出来るが、寮にいる間も素泊まり料金がかかるし、大学校に通っている殆どが家族を持っている。


離れて知る、家族のありがたさ。
離れて解る、愛しい人への想い。


俺も、毎週ではなかったが、週末は仙台へ帰った。

金曜日の夜、東京駅から19時台の新幹線に乗る。
仙台まで2時間。

すると。

駅の改札口にはいつも。


仕事帰りのエリが、笑顔で待っていてくれた。


離れて解る、愛しい女性(ひと)への想い。


「おかえり、シン」


そう言って、迎えてくれる彼女の。
何にも代え難い満面の笑み。

毎日、毎日。
演習、演習で明け暮れている日々。


その疲れが一気に、ぶっ飛んで。
柔らかい幸福感に包まれる。


「ただいま………」


俺は、荷物を持っていない方の手を、少し冷たい白い指に触れ、絡め、繋ぎ、二人寄り添って、夜の仙台を歩く。


“幸せ”って、こういう事なんだ………。


離れて知る、エリへの気持ち。


そう、感じているのに。
心の何処かで、毎日共に過ごしている結可子の事を気にしていた。


結可子への恋愛感情なんて俺には無いのに。
何でこんなにも俺は気になるんだろう?




まだ、大学校へ通ってひと月なのに………。








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