ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
―――――国分町のイタリアンバー。
金曜の夜ということもあって、不景気関係なしに賑わいをみせていた。
俺とエリは差し向かいに座り、ブラッドオレンジのカクテルを味わいながら、互いに近況報告をしあう。
「―――――へぇ…すげぇな………俺も雑誌出たらすぐ買うよ。ガッコーの連中に見せっから」
「ちょっ………それ………恥ずかしい………」
俺は今、二週間後に発売される女性ファッション誌のヘアメイク特集に載る話を聞かされたばかり。
エリは、地元のタウン誌やタブロイドのヘアサロン特集に、自身が手掛けたカットモデルと一緒に載る事はよくあった。
だが、ああいうのの9割以上は営業企画だから、金出せば載せてくれるもの。
―――――今回は違ったようで。
雑誌社から直接、“大友衣理”と名指しで店に連絡があったというのだ。
年に何度か、ヘアーショーにも参加してるというのと、読者からの意見が今回の雑誌掲載に至ったんだろう。
エリの実力が、仙台だけに留まらず、全国各地からも認められてきている―――――
スゴいじゃねぇかよ………。
エリの顔も、どことなく変わってきた気がする。
淳子さんの店のチーフになって一年。
自信もついてきたし、不景気の中、売上も少しずつではあるが上昇している。
俺が常に一歩リードしていなきゃいけないのに。
何故かいつも、俺はエリを追いかけているような状態だ。
嬉しい反面、悔しい。