ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「別れたダンナは、3歳年下だったんだけど、凄く気が利いて。あたしには勿体ないくらい、優しい彼だった………親が決めた結婚だったけど、『この人となら、一生寄り添っていける』そう思って尽くしてた…何か、“尽くす”って言葉、あたしに合わない感じするでしょ?でもね、大学卒業して勤めた会計事務所辞めて、彼のお父さんの会社をずっと手伝いながら、主婦、してたんだよ」
俺に明るく振る舞う結可子。
でも、お前………。
全然笑えてねぇっちゃ。
目が笑ってないって。
愛想笑いだって、鈍い俺でもすぐ解るって。
俺を見ているようでいて、全然見ていない。
俺を通り越して、ずっと遠いところを見ている。
「じゃあ、何で別れたんだよ!!…旦那の浮気か?………まさか、お前が………」
カタッ………と、レンゲと箸を置き、結可子が目を伏せた。
一分?二分?
暫く沈黙が続いた後。
まるで決心でもついたかのように軽く頷き、俺を見つめ直す。
その後、腹部辺りを撫でながら、結可子はぽつりと呟いた。
「あたし………子宮がないの………子供…産めないカラダになっちゃった………」
雷(いかずち)が、一瞬で俺を貫いた―――――
「……………マジかよ………」
言葉にするのが、精一杯だった。