ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「………彼もあたしも一人っ子でね。2人とも『子供欲しいね』って。ずっと話してた。だけど、なかなか子供出来なくて………5年前に二人で不妊治療を受けるために病院へ行ったの。その時………解ったの。自分が…子宮頸ガンになってたことが………」
「……………」
「子宮頸ガンってね、自覚症状がほとんどないの。だから、気付くの遅くって………若いから進行も早かったみたい。もう、全摘しないとダメだって………」
結可子の肩が、小刻みに震えている。
押し殺していた気持ちが、今すぐにも決壊しそうなほど。
「結可子………もういいよ………」
俺の言葉に、彼女はブンブンと横に大きく首を振る。
その拍子に、小さな涙の粒がポロポロと零れた。
「それまで、すごく優しい彼だったのに………あたしの子宮………全摘したら………抱いてくれなくなった………女として、見てくれなくなった………」
「…………」
矢継ぎ早に来る衝撃的な言葉に、思わず言葉を失う。
女が多いウチの家族。
女に免疫があってもいいのに、俺はいつもそういう話に目を背けてきたから、こういう時、どんな風に返していいものか、正直悩む。
妊娠しやすい時期、しにくい時期。
それだって、エリと付き合い始めて知ったほど。
(多分、周りの女は俺がこういう事を知っていると思って、『あえて常識は言わない』つもりでいたんだろうな………)
「ねぇ………真一?………子宮が無いと、女じゃないの?!」
力強くも、悲しげな………。
まるで喉の中身を搾り取るような声で。
結可子は、俺に訴えた。
「ねぇ?!真一!!………真一はどうなの?………子供が産めないと女失格なの?あたしはあたしなのに………?!ねぇ………答えて…………答えてよぉ………」
堰を切ったように、止めどなく溢れる結可子の涙と、感情。
俺は―――――
彼女の涙顔を、真っ直ぐ見ることが出来なかった―――――