ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「………今夜だけ……今夜だけ…真一と一緒にいたい………明日になったら、忘れるから………」
「………」
「明日になったら………ただの友達に………同期生に戻るから………」
まだ結可子の中に、俺がいたこと。
「………わかってる………真一に婚約者がいること…わかってる………」
「じゃあ何で?………何でんな事言うっちゃ………わかってんだったら、俺を誘惑するなよ。俺はそう簡単に―――――」
気が付くと、俺に胸に預けていた顔を上げた結可子は、上目遣いで俺を真っ直ぐに見詰めていた。
ブレもせず、強い眼差しで。
思わず、声を失う。
ああ―――――
10数年前、お前に突然告白されたあの夜。
あの夜も、こんな感じだったよな………。
あの時は暗闇だったから、お前の表情がよく判らなかったけど。
きっと、同じ瞳で俺を見ていたんだろうな………。