ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
ガラス越し―――――
ホームの俺に気付いた結可子は、鳩が豆鉄砲喰らったような顔して。
妙に可笑しくて、愛しくて。
思わずケタケタと笑ってしまった。
デッキに走って来た結可子を、俺は新幹線の中に入り、腕を引き寄せ抱きしめた。
「ちょ…っ…真一?」
「………一度ウチさ帰ったけど……ハァ…お前の事気になって……ハァハァ…」
電話の時は気付かれないように気を遣ってた呼吸も、結可子を抱き締めた途端、ぷつりと呼吸のリズムが変調した。
息が上がる………。
「………そんな…予想外のことされたら………」
俺の胸の中で、啜り泣く結可子。
そっと、彼女の栗色の短い髪を、俺は何度も撫でる。
「………俺があのまま別れるのが嫌だった………月曜日に…ハァ…また会うっつったって………俺の気持ちがモヤモヤしたままで………自分なりにケジメ………付けたくて………」
「真一………」
相変わらず、俺は利己的だ。
自分の事しか頭にない―――――
自分の気が済めば、後先なんて考えない。
もう止められない―――――
俺は、結可子の身長まで屈んで、キスをした―――――