ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
どちらから合図したわけではないが、お互い同時にゆっくりと唇を離す。
唇にはほのかな甘さと、余韻が残る。
互いに見詰め合うと、涙ぐむ結可子の目尻を、人差し指でそっと拭った。
「―――どう?俺のキス。ホントはさっきこうしたかったんでしょ?」
俺はにっこり笑って結可子に訊いた。
素直になれない、俺。
キスしたかったのは、俺の方なのに。
「………バッカじゃないの?………」
「ん?」
「………だから……真一はバカだって言ってんのよっ!!………女のキモチ、全然わかってな―――んんっ…!!」
声を荒げる結可子を、俺はキスで塞いだ。
今度は、結可子がすぐさま俺を引き離す。
俺の両腕を抑えたまま、俯く彼女。
「ちょっ……何なの?っつーか………ワケわかんない………」
「………じゃあ俺の気持ち、結可子は解るのか?」
「…………」
俺の言葉に、結可子は顔を上げ、目を丸くして俺を見詰めた。
「お前、すぐ強がっから。すぐ無理すっから。昔の恋人だからとかじゃなくて、悪友だろうが戦友だろうが、俺たちは同士だろ?結可子の事………放っておけないから………」
「しんい……ち…?」
「我慢することねぇよ。俺、いつでもお前の力になるから………」
両腕を捕まれた結可子の手をそっと外し、もう一度抱きしめた。