ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
“お客様にご連絡致します―――信号トラブルの点検が終了致しましたので、まもなく、やまびこ214号東京行きが発車致します――――”
車内から流れる、駅のアナウンス独特の、鼻にかかった声。
そのアナウンスを聞いた後、ゆっくりと、今度は俺から身を離す。
「ゴメンな………急に………ただ、結可子をほっとけなくて………」
「………ううん………アリガト、真一。実に真一らしい………その向こう見ずというか、後先考えないっていうか…相変わらずバカよね…」
「“バカ”は、余計だ」
涙堪えながらもクスクスって笑う結可子。
その滑稽だけど愛らしい微笑に、俺もつられて笑ってしまった。
「もう、出発するから………」
「ああ………」
俺は、後ろを振り返らずゆっくりとホームへと退(さが)った。
「真一、ありがとね。何かあったら真一に相談する。ひとりで抱え込まないようにするから………でもね―――――」
「でも…?」
「仕事以外、二人だけで会うのはやめよ」