ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「え?」
「だって………たとえあたしたちの間に今は何もなくても、このことを婚約者が知ったらすごく傷つくもの………」
―――――最後まで、結可子はエリのことを心配していた。
俺とエリの仲が壊れないように。
何だよ。
何だよ、それ?
眉毛ハの字にさせて言うなよ、そんな台詞。
そういうつもりじゃなくて………。
恋愛感情とかカンケーなくて………。
なんつーか…。
そう頭ん中の回路が忙(せわ)しく駆け巡っていると。
「来てくれて嬉しかった……あたしだって、真一の幸せ…願ってるんだから………」
ポツリと、蛍の光のように。
頼りなさげで儚げな声で、呟いた
「結可子………あ……」
―――――結可子の最後の言葉を合図に、ゆっくりと、新幹線のドアが閉まった。
揺れ動く扉の向こう側。
涙目ながらも笑顔で小さく手を振る彼女に、俺は、ただただ、黙って見送ることしかできなかった。
―――――月曜日、俺は普通に結可子に会えるんだろうか?
東京へ向かう新幹線の中、口づけ交わしたあの場所(デッキ)。
しゃがみこんで泣いてる結可子の気持ちも知らずに、俺は仙台駅を後にした―――――