暴君とパシリちゃん
離れた桜の手が、振りかぶり、見事なグーパンチが炸裂した。


「痛ってー!」


綺麗に入ったグーパンチにしゃがみこむ。


まさか殴るとまで思っていなかった私も、ビックリして、涙も止まる。


「自分の顔見てから喋れ!」


呆然とする先輩にそう吐き捨て、私の手を取り、走り出す。


「さっ桜!」


「逃げるよ!」


ニッと笑う桜に、私も自然と笑顔になった。


そうだ…


小さな頃から、苛められる私を助けてくれた。


棒を振り回し、殴りかかり…

必殺技は【飛び蹴り】だと、自慢気に話をしていた事もあった。


やっぱり…桜だ…


嬉しくて、また、涙が出そうになった。
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