暴君とパシリちゃん


桜の攻めにも動じない。


磨莉亜が人だかりの方に目を向けた。


しばらく、ジッと見ていた磨莉亜の目が、見開いた。


「…羽…璃…」


小さく呟く声は誰にも聞こえることなく、消えた。


持っていた缶コーヒーがカンッと一際大きな音を立てて、机に置かれた。


少し、中身がこぼれる。



ツカツカと磨莉亜が近づいてきた。


怖い顔してる…


なんで…


怒ってるの…?



磨莉亜の為に、人だかりが割れていく。


反射的に椅子から立ち上がり、後ろに逃げようとしたが、あっさりと手首を捕まれた。


「…磨莉亜…?」


眉間によせたシワが消えない。


「これ…桜がやったのか?」


後ろにいた桜に言った。


「そうよ?可愛いでしょ?」


桜の言葉に、チッと舌打ちすると、無理矢理、羽璃をつれて、教室を出ていった。
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