暴君とパシリちゃん
ズンズンと引きづられるように連れていかれた。
「…ま、磨莉亜!?どうしたの?ねぇ、磨莉亜?」
180センチと背も高い磨莉亜と、152センチしかない羽璃とでは、足の幅も違う。
着いていくのに必死だった。
少し乱暴に連れてこられたのは、視聴覚室。
羽璃を中に入れてから、後ろ手に鍵を閉めた。
その目は、ジッと羽璃を見たまま。
まだ、イラついたままの瞳に、怖くて、後ろに下がっていく。
ほとんど、ビデオ鑑賞ぐらいでしか使わない視聴覚室は、やっぱり、誰もいなくて、ひんやりとした空気があった。
「羽璃?」
いきなり呼ばれて、ビクッと体が跳ねる。
磨莉亜が近づけば、羽璃は下がる。
トンッと、背中の冷たい感触に、後ろを見ると、窓に追い詰められていた。
視線を磨莉亜に戻した時、目の前まで来ていた事に、またビクッとする。