暴君とパシリちゃん


「なんで逃げんの?」


そう言われて、逃げようとした羽璃の顔の横にバンッと両手が置かれた。


磨莉亜を見ると、間違いなく、イラついている。


目がわらっていない。


「だ、だって…磨莉亜が怒ってる…」


「怒ってるよ…?」


そう言われて、またビクッと体を振るわし、下を向いた。


フワッと甘い香りがした。


「香水…着けてるの?」


磨莉亜が聞いてきた。


小さく頷く。


「持ってた?」


「ママの…」


その言葉にフッと笑みが溢れる。


「ママが貸してくれたの…」


(きっと羽璃のおばさんの事だ…可愛くなったからついでに香水もって、無理矢理着けたんだろう…)


「出掛けに、かけられちゃって…」


(やっぱり…)


ふっとまた笑みが溢れた。
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