暴君とパシリちゃん


ガラッと音がして、誰かが入ってきた。


鍵を持っているのだ。


教師だろう。


羽璃には、そんなことはどーでも良かった。


スッポリと収まった磨莉亜の胸の中。


外にいるだれかに聞こえてしまうのではないか。


磨莉亜に聞こえてしまうのではないか。


羽璃の心臓は壊れそうなほど、バクバクと動いていた。


ガラガラ…カチャカチャ…


扉が閉まり、静かになると、磨莉亜は、ゆっくりと羽璃を離した。


羽璃は、まだうつむいたままだ。


真っ赤になった顔を磨莉亜に見せるわけにはいかなかった。


「羽璃?」


返事をしない羽璃。


「羽璃?誰か好きな奴がいるのか?」


磨莉亜の言葉に反応して、羽璃が磨莉亜を見上げた。


赤く染まった顔。


潤んだ瞳。


「…いるんだな?…」


羽璃は、ただ頷くことしか出来なかった。


それが磨莉亜の誤解を生むとは知らずに…


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