暴君とパシリちゃん
毒リンゴは甘く…
キス…
誰もいない視聴覚室に、2人は息を乱し立っている。
激しさを増す磨莉亜のキスに、羽璃は必死に着いていこうと、磨莉亜の制服を掴む。
「…んっ…はぁ…」
唇が離れると、まだ足りないとでも言いたげな、潤んだ瞳が磨莉亜を見つめる。
「そんな目で見んなよ…」
押さえきれず、その場にあった机に羽璃を押し倒すと、もう一度唇を重ねた。
(羽璃…羽璃…)
キスの契約をした日から、毎日のように、隠れてキスをした。
その度に、羽璃は涙を流す。
(やっぱり…)
唇を離すと、涙が流れるのが見えた。
(そんなに…嫌なのか?好きな奴の事考えているのか?)
長く綺麗な指が、涙を拭った。
「…ま…りあ…?」
うっすらと開いた瞳が潤んで、磨莉亜を見つめる。
(誰の事、考えてんだよ!?)
羽璃が見せる涙が、無性に腹立たしかった。
自分以外が羽璃の中にいる事が嫌だった。
もう一度、激しく唇を奪う。
自分以外の事を考えないようにしたかった。