暴君とパシリちゃん
「前みたいに戻さないの?」
窓の外を見つめる羽璃に、机の上に座ったまま聞いた。
「ん…少しでも、女の子に見えたいから…」
振り向いて微笑んだ顔が、逆光で霞んだ。
(誰に?)
口から出そうになった言葉を飲み込んだ。
「ふーん…」
羽璃から離された視線が、どこか違う所を捕らえる。
(磨莉亜には、そんなこと、関係ないよね…)
視線を反らした磨莉亜から、羽璃も窓の外に向きなおした。
羽璃の背中を見ていると、抱き締めたくなる…
唇を奪うと離したくなくなる…
唇を重ねていると、それ以上欲しくなった。
窓の外を見る羽璃の小さな背中を見て、そんな考えが頭を回り始め、磨莉亜は気付かれないように、ブンブンと首を降った。