暴君とパシリちゃん
「はぁ…」
ため息が出る。
自分で選んだことだけど、磨莉亜が分からない。
キスをされる度、呼ばれる名前。
男の癖に色っぽい声。
キスも慣れてる…
私が初めてなのに、磨莉亜はきっと、その他大勢と同じように私にキスをするんだ…
羽璃は無意識で自分の唇に触れていた。
「はぁ…」
またため息…
ガコンッ
羽璃がたたずんでいた自販機から何かが出てきた。
ビックリして、振り向くと、知らない男の子がボタンを押している。
「あっ!すみません!」
サッと横に避けると、お辞儀をして謝った。
「いーよ。俺もビックリさせちゃったね?」
プルプルと首をふる羽璃を見て笑いかけてきた。
ドキッとする。
黒ぶちのメガネの奥に優しそうな目が見えた。
良く見ると、磨莉亜にまけないほどの美形だ。