暴君とパシリちゃん


羽璃が差し出した小銭を取ると、財布に戻す。


「あの…」


「男に恥かかしちゃダメだよ?これは、俺のおごり!」


ニッコリと笑うその人に戸惑った。


今までそんなことをされた事すらない。


「でも…知らない人にそんな…」


羽璃がドキマギしながら言うと、頭上でクスクスと笑う声がした。


「君はイイ子なんだね?」





小さく首を傾げた。


「知らない人からものを貰っちゃダメ!でしょ?ママの言い付け?」


からかわれてる!?


「そ、そんな子供じゃありません!」


慌てる羽璃を見て、笑っている。


「俺は、石井湊(いしいみなと)。お礼は、今日、昼御飯一緒してくれたら、嬉しいな?」


「え?」


「ダメ?」


「私と食べて美味しいんですか?会話だって弾まないと思うし…」


「気にしない。じゃ、お昼に中庭でね?」


「え!ちょっ…と…」


石井湊は、自分だけ納得したように、スタスタと行ってしまった。



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