暴君とパシリちゃん
昼休みになり、磨莉亜に気づかれないように教室を出ようとした。
「羽璃?」
囁くように呼ばれ、体が反応して立ち止まった。
振り向くと、机に体を預け、寝起きの磨莉亜が見ていた。
「どこ行く気?」
「あ…お昼…」
「ふーん…」
ジッと見つめられて、動けない。
「羽璃?行くよ?」
桜が強引に腕を引っ張って、教室を後にした。
「桜?」
「羽璃!磨莉亜に縛られすぎだよ?」
そうなんだ。
呼ばれただけで、動けなくなる…まるで、奴隷のようだ…
「石井先輩、待ってるよ?」
「え?」
桜の視線の先に、笑顔の石井先輩がいた。
ペコリと会釈する。
「行ってきなよ!」
「うん…」
まだ乗り気になれない羽璃の背中を押した。
不安そうな目が桜に向けられたが、ユックリと石井の元へ歩いていく。
「お待たせしました…」
「大丈夫、待ってないよ。…学食がいい?」
小さく首を横に振る。
「じゃ、何か買って、中庭で食べよ?」
「はいっ」
ニッコリと羽璃は微笑んだ。