暴君とパシリちゃん
「あれ、誰?」
羽璃と石井の後ろ姿を見送っていた桜の背後から、いきなり声がして、ビクッと体を振るわした。
振り向くと、ジッと二人の背中を見る磨莉亜がいた。
「先輩…」
「ふーん…羽璃狙ってんの?」
「そうみたいね…」
チラリと磨莉亜を見て、桜はゾクッとする。
二人を見る目の冷たさ。
桜は分からなかった。
羽璃をパシリとしか見ていないように見えるのに、今の磨莉亜は、石井に嫉妬しているようにしか見えない。
「上手く行けば、初彼だよ?」
何も言わない磨莉亜にイライラする。
「羽璃の事、パシリとしか見てないなら…もう、解放してあげなよ!あんたの玩具じゃないんだからね!」
そう言って、桜も学食の方へ走り去っていった。