暴君とパシリちゃん


「ごめんな…」


中庭に着くと石井が謝ってきた。


「何がですか?」


お弁当を開きながら聞き返す。


「弁当持ってきてるとは思わなくて…さ…」


羽璃の膝に置かれたお弁当を見て苦笑いした。


「これ買うの付き合わせて、時間かかっちゃったから…」


手に持ったサンドイッチや他のパンを見せて笑う。


「気にしてませんよ?いつも一緒に食べてる友達もそうですから…」


「そっか!」


太陽のように笑う石井に羽璃は眩しそうに目を細めた。


笑い方も話し方も違う磨莉亜と石井…


いちいち比べて見てしまう。


最近の磨莉亜は、自分を見る時辛そうにしている…


命令する時も、笑う時も、自分を見る目も…そして、キスをする時も…


自分の存在が磨莉亜にあんな顔をさせるのか…


でも…


それでも、側にいたいと思う自分は、ただの我が儘な女だ…


羽璃は、ボーッとそんな事を考えていた。
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