暴君とパシリちゃん


羽璃の差し出した唐揚げにかぶりついた。


「うまい!」


「ですよね!」


石井の美味しそうな表情に、羽璃もはしゃぎ出す。


「今の顔…」


「え?」


急に真剣な顔をした石井を羽璃は見つめた。


「可愛かった…」


真剣な石井の目を、羽璃はサッと反らした。


「嘘…」


磨莉亜は言ってはくれなかった…


私はまだ可愛くない…


「本当。羽璃ちゃんの笑顔。俺好きだよ?」


好きというフレーズにビックリして、石井を見ると、真っ直ぐな瞳が自分を見ていた。


「石井先輩…」


「羽璃ちゃんは可愛いよ…」


スッと延びてきた手が、羽璃の頬に触れた。


ビクリッと体を振るわしたが、石井の目を反らせなくて、ジッと見つめてしまう。


「その目も…」


小さく呟きながら石井の整った顔が近づいてきた。


「俺を誘ってるようにしか見えないよ?」


目があったまま、唇が触れそうになった時、ポケットに入れたままだった携帯が勢い良く震え出した。


その瞬間、羽璃は、石井から体を離していた。
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