暴君とパシリちゃん
「あっ…ごめんなさい…」
謝って、ポケットから、携帯を取り出して、ディスプレイを見ると、
【磨莉亜】
と表示されている。
チラッと石井を見てから、躊躇しながらも通話ボタンを押した。
「はい…」
「視聴覚室」
低い声がそれだけを伝えると、プツッと通話が切れて、プーップーッと寂しい音だけが、耳に流れてきた。
「あの…課題提出してなくて…友達から連絡があって…」
携帯を握りしめて、言いにくそうに言う羽璃に、苦笑した。
「いいよ?行きな」
お弁当を素早くランチボックスに片付けると、ペコッとお辞儀をした。
「また、お昼付き合ってね?」
余裕のある笑顔で言われて、さっきの事が頭に浮かび顔が真っ赤になる。
もう一度、お辞儀をして走りだした。
向かうのは、磨莉亜の待つ視聴覚室だ。
走り去る羽璃の後ろ姿を見ながら、石井は、フッと顔を緩ました。
「まいったな…マジ、可愛いわ…」