暴君とパシリちゃん


「…磨莉亜…」


囁くように名前を呼ぶと、磨莉亜の閉じていた瞳が開いた。


いつもなら、羽璃を欲しているような熱のこもった潤んだ瞳があるのに、そこには冷たい瞳しかない。


羽璃は怖くなり、首を振り続けた。


「…いやっ…磨莉亜…やめっ…痛っ」


押さえつけられた手首に痛みが走り、見ると、磨莉亜の手が羽璃の華奢な手を力いっぱい握っていた。


「磨莉亜!痛い!」


苦痛に涙が出てくる。


ポロッと溢れた涙を、磨莉亜の唇が拭った。


それと同時に手首から圧力が消える。


解放された手首には、ハッキリと磨莉亜の後が残っていた。


「痛い?」


磨莉亜の顔を見ると、冷めたままの瞳と目があった。


「痛い…」


うつ向くと、涙が流れ落ちた。


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