暴君とパシリちゃん
人通りの少ない方へと歩いていくと、何か話し声が聞こえた。
なんだよ…
先客か…
そう思いながら、横目で窓の中を見てみた。
窓には、棚が並べられているせいで、ほんの少し隙間があるだけ。
そこには、男女がいて濃厚なキスをしていた。
ちっ…
人の見る趣味はねーよ!
真夏の腰を引き寄せ、立ち去ろうとした時、男の影にした女に目を奪われた。
「う…り…」
「え?瓜生?」
つぶやくように言った港に、真夏が聞き返した。
窓の中に釘付けになった港を不思議そうに見ている。
「何が見えるの?真夏みえないもん!」
高い位置にある窓の隙間を見ようとジャンプしてみる。
「おまっ!バカ!」
「んっ!」
飛び上がる真夏を抱きしめ、口をふさぐ。
「ちょっと静かにしてろ!」
「んんー…」
手で塞がれた口を指差して、離してと頼むが、石井の視線はすでに窓の中に向いていて、真夏は、抵抗する事を諦めた。