月の心~それぞれの心
けれどやはり
別れはやってきました

ある日キリンは
静かに座っていました
自慢の長い首にも
力がありません

『どうしたの?キリンさん』

お月さまはそう聞きながら
泣いていました
いつかのウサギとの別れが
心の中に甦ります

「お月さま…僕はね」

キリンは弱々しく
力ない声で言います

「今日で…お月さまと」

お月さまは
ぎゅっと目を閉じました
次の言葉を聞きたくない…
そんな気持でいっぱいです

けれど…

「お月さまと…お別れしなきゃいけないんだよ」

『キリン…君…』

お月さまは
声にならないまま
叫びました

「お月さま、僕の事…忘れないで、ね」

そう言うとキリンは

ゆっくりと
瞳を閉じて

それきり動かなく
なってしまいました

『忘れない…忘れられないよ、キリン君…』

そう言って
お月さまは声を出さず
泣きました


お月さまの涙は
大地に降り注ぎ
小さな花を咲かせました

キリンをいつまでも
忘れないという
気持ちを込めて

キリンとの日々を
見守り続けた日々を
心に刻むため
お月さまは
咲いた黄色い花に

月見草と名付けました
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