君の音
しばらく歩くと彼女は足を止めた



(ここに すんでる
きょうは ありがとう)





「あぁ。」





(ふく ありがとう)





「気にしないでいいよ」





(じゃぁ…。)






彼女は小さく手を振りマンションへと入っていった








彼女は手話でなにを伝えたんだろう





俺は頭のなかで彼女の手の動きを忘れないように繰り返した






「あるのかな…」






俺の足は無意識に早くなっていた


通い慣れた本屋に着くと
いつもは素通りするコーナーへと向かった。





「あ…あった。」






一冊の本を手に取り
彼女の動きを思い出しながらページを捲った。








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