図書物語





「す、すいません」




いつまでもぼんやり突っ立っていたら不審者に思われてしまうと思い、慌てて横に避け、通路をあけた。





「ありがとうございます」





ふっと目を細めて、彼は優しく微笑んだ。




私は、ワゴンを押す彼の姿が見えなくなるまで、そこで固まっていた。





ただ少し




言葉を交わし




笑いかけられただけ




それなのに




心臓は馬鹿みたいに




つよく、はやく




私を、ふるわせていた






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