図書物語
でも、歩いているこの間にも、やはり、どうしてもあの人のことを考えてしまう自分がいた。
ああ、私、本当に重症だ。
自分で自分がいたい。
ろくも知らない人のことを、こんなにも気になって考える自分が、いたい。
いたすぎて、悲しくなってしまう。
そんな風に思考がぐるぐると回る中、前を見ずに館内を歩いていたもんだから、どん、と誰かにぶつかってしまった。
「わ、すいませんっ」
慌てて我に帰り、前をみるとそこには、なんとまあ、白いワゴンの中から山のように積まれた本を手に取り、棚に返そうとしているあの、司書さんがいた。