図書物語
「くれや、さん。呉夜冬磨さん…」
名前、名前を知れた。
それだけで嬉しくて嬉しくて、なんだかこのままどこかに飛び出してしまいそう。
「君は?」
「え…?」
「君の名前も教えて」
まさか、そんなこと言われるなんて想定外だった。
胸が、いたい。さっきとは、違ういたみ。嬉しすぎて、苦しい。
「木ノ下さくら…、です」
「きのしたさくら…、うん、覚えた」
そう言って笑った彼の笑顔を、私は一生忘れないだろう。