図書物語
「あの、ご、ごめんなさい、ちょっと前の記憶を思い出していまして。それでぼうっとしてたっていうか……」
慌ててそう言うと、「ふうん、どんな記憶?」と呉夜さんが不思議そうに首を少し傾げた。
あ、その動作、かわいいかも。なんて、この状況できゅんときている私って、ほんと馬鹿だと思う。
「えっと、それはですね…、なんというかですね…」
「うん、なに?」
「はい、えーと…、それはですね…」
「うん、で?」
「うーんと、だからですね…」
「うん、だからなに?」
いつまでも、こんなやり取りを繰り返しているわけにもいかない。
私は、ごくり、と喉を鳴らして覚悟を決めた。