笑顔 -電車での出逢い-

「大丈夫!!彼だって困ってんだからウマいことやってくれるって♪」

そう言ってピースする香菜実…

『えっ…でも…』

なかなか席を立って彼の所へ行かない私に

「早く行かないとたかしたち気づいちゃうわよ?」

そうビシッと言ってきた

仕方ない。まぁ…

なんとかなるよね?

根拠なんてないけど。

私は席を立って香菜実に意味深に視線を送ると

彼の所へと向かう…

私…今すごくドキドキしてる。

ドキドキしながらも足を進める私はもう

あと2歩か3歩踏み出せば

彼の真後ろに立ってる状態…

一瞬足を止めて大きく深呼吸をすると

また足を動かす…。

彼の少し後ろに立った私…

ちょっと横にずれて

斜めから彼の横顔を見つめる…

困ってるってのが明らかに分かる顔してる…

目をあちらこちらに泳がせて苦笑いをうっすら浮かべてる…

その表情(カオ)は私が初めて彼を見たときの表情(カオ)じゃないね…。

電話をしてる時みたいな笑顔じゃない…

幸せそうな明るい笑顔じゃない…

そんな彼に胸が少しだけ締めつけられた…

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