Magical Moonlight

別れ

「昨日言えればよかったんだけど、…俺、引っ越すんだ」

 私は、彼が何と言ったか、一瞬理解できなかった。

「俺と同じクラスのヤツにも、言わなかったんだ。どうせ卒業したら、疎遠になるだろうから」

「だけど、…高校は?この近くの学校受けてたよね?」

「引っ越し決まったのが、願書出してからだったんだ。だから、一応受けた。でも、事情話して、入学辞退の手続きは取った」

 でも、なんで、昨日言ってくれなかったんだろ。

「言うつもりだったんだ。でも、おまえが泣いてるのを見たら、言い出せなくて」


 確かに、卒業式の時、私は泣いていた。自分でも、その理由がわからなかったけど、涙が止まらなかった。

 もしかすると、杉峰君がいなくなることを、自分でもわからないところで、感じ取っていたのかもしれない。


「いつ、引っ越すの?」

「明日。…明日の朝、出発する」

 明日!?いくらなんでも、早すぎる!

「明日なら、なおのこと、どうして言ってくれなかったの!」

「後で、行こうと思ったんだ。…もちろん、アンタレスの姿で」

 学校では、ほとんど話した事がなかった。同じクラスになったことはないからね。

 それに、卒業式に杉峰君と話をしていたら、他の女子に、変な誤解を招くことになるかもしれない。

 だけど、私たちをつなぐのがアンタレスだとしても、もしネコになってもアンタレス会えなかったら、どうするつもりだったの?

「それは…」

 杉峰君は、言葉に詰まっていた。
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