Magical Moonlight
Dog

キャシー

あたしの名前はキャサリン。

みんな、キャシーって呼んでくれる。

ご主人様に連れられて、この家に来たのは、まだ外が寒い、冬のことだった。


家の中は、いつも暖かい。

雰囲気も、人の心も。

でも、あたしの中では、どこか物足りなかった。

何かが足りないけど、何が足りないのかわからない。

ご主人様も、その家族も、あたしのことをこんなにかわいがってくれるのに。


ご主人様は、散歩好き。

いつも、夕方になると、あたしを連れて、散歩に出かける。

家の近所を回り、住宅地を抜けたところにある公園に寄る。

公園の、いつも決まったベンチで、休憩を取る。

あたしは体が小さくて、足も短いから、ついていくのがやっとだ。

そんなあたしを気遣って、休憩を取ってくれるらしい。

しばらくそこで休憩を取った後、今度は少し違う道を通って、家に戻る。


すれ違う人は、あたしのことをかわいいと言ってくれる。

頭を撫でられることもある。

しきりに「お手」を繰り返す人もいる。

ご主人様たちに教えてもらったから、それなりに芸もできるけど、あたしにだって、やりたくないこともあるんだ。

イヌだからといって、バカにしてほしくない。


最近、ご主人様は、犬の写真を見ることが多くなった。

なんでも、あたしのお見合い相手を探してるらしい。

「そろそろ年頃だから」と言ってるけど、犬に年頃なんてあるのかしら?


いろんな写真を見せてもらったけど、どれもあたしの満足いくものではない。

たまに、会わされることもあるけど、やっぱりあたしの好みのタイプはいない。

ご主人様が言うには、「血統書付なのよ」ということなんだけど、あたしには、よくわからない。

血筋がいいって、そんなに大事なことなのかしら?

あたしは、自分が好きになる方と一緒になりたい。

たとえ、種族が違ったとしても。
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