Magical Moonlight

ショック!

その数日後。

あたしは、ご主人様と一緒に、散歩に出かけた。

公園を出たところで、彼に会った。


―知らない女と、一緒にいた―


「あら、どうも」

ご主人様が、挨拶する。

「どうも、お久しぶりです」

彼も、そう言った。

「そちらの方は?」

彼は、自分の恋人だと語った。


―ショックだった。そんな人がいるなんて、まったく聞いたことがなかったから。

この間だって、そういう人がいるような話はしてなかったじゃない。

そう、あたしが聞いたのは、彼の身近な話。でも、彼女の話なんて、ひとことも言ってなかった。


「あら、かわいいワンちゃん」

彼と一緒にいた女が、あたしに向かって、手を伸ばしてきた。

あたしは、その手に向かって、うなり声をあげた。

「あら、どうしたの、キャシー?」

ご主人様があたしを撫でた。でも、怒りは収まらなかった。


それからも、何度か彼が女を連れて歩いてるのを見かけた。

散歩中も、家の窓からのぞいた時も。

怒りは、悲しみに変わっていき、あたしは外に出る楽しみすら感じなくなってきた。

「キャシー、散歩に行くわよ」

ご主人様が声をかけてくれるけど、そんな気になれないあたしは、ソファーの上で眠ったふりをするようになった。
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