Magical Moonlight

悲しい結末

外に出ると、彼が、女と一緒に歩いてくるのが、見えた。

あたしは、彼に声をかけた。

「あ、あの…」

彼は、一瞬、とまどった表情をした。

「誰?」

女が彼に問う。

「えっと…」

彼は、彼女とあたしを交互に見た。答えに迷っているようだ。

「…きっと、人違いだよ」

そのひとことを聞いた瞬間、顔から、血の気が引くのがわかった―

「…覚えてないはずないじゃない、あの日、あたしたちは結ばれたのだから」

思わず、そう口走った。

「え?なにそれ?」

女は彼を責める。が、彼は何も言わなかった。

「こんな人がいるなんて、あの時何も言ってなかったじゃない」

彼がうろたえる姿が見える。でも、弁解しようとはしなかった。

「あたしの彼を奪ったあなたを、許せない。…許せない!」

あたしは、女に向かって、包丁を振り上げた。

「危ない!」

包丁を突き刺そうとしたその時、女の前に、彼が出てきた。


  ボスッ!


鈍い音がした。赤い液体が流れ出す。

あたしの目には、…脇腹を押さえてしゃがみこむ、彼の姿が見えた。

「あ…」

女は、その血を見て、悲鳴を上げた。

「キャーッ!」

そして、そのまま、どこかに走り去って行った。
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