Magical Moonlight

キセキの光

にーちゃんが、引っ越す日が来た。
「これで最後だね」
ねーちゃんはさみしそうな顔をして、
ぼくを抱いてくれた。

ねーちゃんは、にーちゃんにぼくを渡すと、
その手をゆっくり離した。

と、その時、
部屋に、光が差し込んだ。
…そうか、今日は満月だ。
満月の光が、ぼくに当たる。
ぼくの中に、何かが入ってきた気がした。

「…行っちゃやだ」
にーちゃんとねーちゃんが、驚いた顔をする。
「ねーちゃん、行っちゃやだ!」
ねーちゃんは、ぼくの方を見た。
「ぼくは、にーちゃんとねーちゃんと
 一緒にいるのが好きなんだ!
 なんで一緒にいちゃいけないの?
 ねえ、なんで?」
ずっと言えなかった、心の叫び。
もしかすると、満月が、
ぼくに力を与えてくれたのかもしれない。
ただの、ぬいぐるみのぼくに、自分の気持ちを伝えるだけの、力。
そして、「キセキ」。
< 28 / 36 >

この作品をシェア

pagetop