Magical Moonlight
「どうやって、家に入るの?玄関、鍵かかってるんでしょ?」

 その後、私たちは、杉峰君の家があるマンションへとやって来た。彼の家は、その3階にある。物騒な世の中だから、玄関の鍵はかけて寝ているそうだ。

 とすると、杉峰君は、どこから家の中に入るのだろうか。ベランダから入るにしても、3階じゃあね…。

「もう一度、アンタレスになる。アンタレスなら、あの壁登れるだろ」

「ネコに?…でも、12時過ぎてるじゃない」

 杉峰君の話では、彼がアンタレスに変身できるのは、満月の光を浴びてから12時になるまでと、夜が明けるまでの5分間。こちらは、月の光を浴びながら強く念じればいいそう。

「降りるよりも、登る方が難しいんだけど、ネコだから、さ」

 そう言って、杉峰君は、私に微笑みかけた。でも、その笑みには、少しだけ寂しさが見えたんだ。

「じゃあ、俺、行くよ」

 金色の光が、彼を包み込む。次の瞬間、そこにいたのは、先ほどのネコだった。宝石のようにキラキラ光る毛を持った、あのネコ。

 私は、ネコの名前を呼んでみた。

「ア・ン・タ・レ・ス…?」

 ネコ ― アンタレスは、ミャア、と、一声鳴いて、マンションの壁を登っていった…。
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