記憶の扉
そこは、県道沿いの歩道に変わっていた。
両手に買い物袋をぶら下げたお母さんを従えて、わたしは前を歩いていた。
「帰ったらケーキ食べよっか」
「うん」
わたしは振り向いて大きく頷くと頬ずりするようにお母さんの腕をつかんだ。
見上げると、にっこり笑うお母さんがいた。
きれいなお母さん、優しいお母さん、大好きなお母さんがそこにいた。
「あっ、お父さんだ」
道路向かいにお父さんを見つけ、わたしはふらふらと車道に飛び出した。