記憶の扉
 
目を開けるとそこには裕樹がいた。

わたしは還ってきた。
父に代わってベッドの中にいた。

「お母さんのことを思い出したのか」

そう、それは夢なんかじゃなくて、わたしの消し去っていた記憶。

「自分を責めることはないんだよ。今の悦子ならわかるだろ。誰があんな小さな子供を責められるっていうんだ。仕方なかったんだよ。そういう運命だったんだ」

「運命?お母さんはあそこで死ぬ運命だった?わたしに忘れ去られる運命だった?」

どこに向けていいかわからない、憤り。・・違う、ちがう。

「そんなはずないでしょ。そんなはずない・・。そんなはずないじゃないの」



 


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