記憶の扉
 
「悦ちゃん、事故だったんだろ。自分のこと責めちゃだめだよ」

やめて裕樹。

「悦ちゃん・・」

わかってる。
わかってるけど、ほっといて。

お願い。



「そうじゃなくて、思い出したじゃない。お母さんのこと、ちゃんと思い出したじゃない」


・・・

「もっともっと、思い出そうよ。お母さんのこと、どんな小ちゃなことでも、全部全部思い出そうよ」


裕樹はわたしの手を取り、深く深く口づけた。


「わたし、わたし・・」

息もできないほどに激しく込み上げてくる。

それは嗚咽となって、言葉にならない言葉を何度も何度もしゃくり上げた。



子供のように泣いた。

あとからあとから涙があふれてきて、止まらなかった。



 
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